北川原温退任展/東京藝術大学

2019年1月7日

拝啓

明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

お正月早々、私事で恐縮ですが、

今春3月、長らく勤めてまいりました教職を定年で退任(卒業?笑)します。学生たちとわいわいできなくなるのは寂しいかぎりですが、心機一転、これからは仕事に専念したいと思っています。退任に際して、芸大恒例の退任展を下記のとおり大学美術館陳列館で開催いたしますので、ご笑覧いただけましたら光栄です。
なお、1月17日(夕方5~7時)にささやかなレセプションを予定しています。おこしいただけましたら幸いです。(17日は夕方7時まで開館)
どうぞよいお年をお迎えください。

敬具

東京藝術大学教授
北川原温
きたがわらあつし

 
 
北川原温退任展

『太陽と月と地球と人がつくる円錐形の闇 / Coni Caligo, a Sole, Luna, Terra, Homineque fit』

DIMARYP, ULYSSES, Lautréamont, jardin/Mallarmé/la maison, la maison ManRay et Juliet Brownerなど新たに制作した14点の未発表作品(コンセプト模型)とパリのポンピドゥ―センター(仏国立近代美術館)に収蔵されている27点のドローイングや模型の一部(写真加工)を展示します。

会期:2019年1月8日~20日
   (午前10時~午後5時、17日は午後7時まで、15日は休館)
会場:東京藝術大学 大学美術館 陳列館(陳列館は岡田信一郎の設計、1929年)
〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
主催:東京藝術大学美術学部 東京藝術大学大学美術館
お問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600 https://www.geidai.ac.jp/museum/
協賛:相臺公豊 | 中川統夫 | 中村和男 | 八木浩史 | 北野建設 | きんでん | 前田建設工業
助成:東京藝術大学 美術学部 杜の会
協力:澤田航 | 甲斐貴大 | 岡崎真理子 | 奈良祐希
   島田佳樹、森木ノ美、今井亮介 | Sam Holden | Tania Kronoz, Aino Salo
   月造 | エフイーシー | 北川原温建築都市研究所

※会場の都合上、お祝いのお花やお品は辞退させて頂きます。
 
 
44年前、建築科の藤木忠善先生の研究室の院生だったときにサウジアラビアで都市計画の研究に従事した。私たちがつくる建築の模型を見た現地の遊牧民は「建物をいくらつくっても、いつか砂にかえる。結局、無駄なものだ」と呟いた。遊牧民の生活は常に移動していかなければ成り立たない。だから大地に固定される建築は彼らから見れば無用の長物なのだ。その一言は沙漠に新都市をつくる夢を抱いていた私に忘れられない衝撃を与えた。たしかに遊牧社会にとって建築は無用であり、農耕社会にとっては有用である、というように社会の形態によって建築の価値はちがってくる。しかし、私がアラビア半島にいて感じたのはもっと深いところに横たわる疑問だった。それ以来、「建築とは何か」についてずっと考え続けている。
(中略)
17年前に母校の藝大に戻り、学生達とともに「建築とは何か」を探求してきた。その答えは未だに見つからない。それどころかますます遠ざかっているように思う。「円錐形の闇」は光の速度で逃走しているのかもしれない。

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